●電子情報技術産業協会(JEITA) 【イベントレポート】
”音と映像と通信のプロフェッショナル展”「Inter BEE 2013」、幕張メッセで開催
-放送機器やプロ向けの映像機器などを一堂に集めた国際映像機器展「InterBEE」が、昨日13日から15日まで、幕張メッセで開催されている。
-本イベントは、いわば業務用映像機器展であり、一般ユーザーが普段見ることない機器がずらりと並ぶ、きわめて特殊なイベントといえる。
-今年のメインは「4K」。主要な大手メーカーブースでは、最新の4K対応機器が多数出展されていた。
-今回は、4K対応のムービーカメラはもちろん、高品位レンズ、4K編集用ディスプレイなども勢揃い。
-家庭用テレビの世界では、大手メーカーから4Kテレビが登場し、50万円前後でも入手できるレベルになってきたわけだが、こと放送や映像製作の現場は、意外に4K化が進んでいないのも現状。
-さらに、2020年の東京オリンピックまでに4Kの次世代の8Kの実用化方針が打ち出されており、4Kはやや過渡的な感覚で捉えられている可能性もありそうだ。
-また、近年はデジタル一眼レフやミラーレス機でも、プロの使用に耐える動画撮影ができるシステムが続々登場していることもあり、その関連機器などもいろいろなメーカーから出展されていた。
●カールツァイス
最新設計の超弩級レンズ「APO Distagon T* 1.4/55」や
本邦初公開のミラーレス機用マクロレンズ「Touit Makro-Planar T* 2.8/50M」を出展
-映画や映像製作用レンズの世界で高い評価を得ている、ドイツ・カールツァイス。
-今回のイベントでは、本邦初公開となる新レンズ「Touit Makro-Planar T* 2.8/50M」と「APO Distagon T* 1.4/55」を出展。
-昨年のフォトキナで出展されて超弩級の新世代標準レンズ「Otus APO Distagon T* 1.4/55」を出展。
-通常、大口径標準レンズというと、ガウスタイプの光学系によるプラナーが定番だが、本レンズはさらに高い光学性能を実現するために、レトロフォーカスタイプのディスタゴン形式を採用。これまでと一線を画す高性能を実現しているという。
-ブースの説明員によると「通常の50mmF1.4をF5.6に絞ったくらいの高い描写性能が、絞り開放F1.4で得られる」という。
-会場では「D800」に装着された状態で展示されていたが、D800が小さく見えるほど巨大なレンズで、到底、フルサイズ対応の標準レンズとは思えないサイズ。
-レンズ表記は、同社のシネマ用最高級レンズと同じく、すべて黄色に統一されており、同格の超高性能であることを示唆している。
-気になるのは、なによりも描写力。ブースの許可を得て、同レンズを「D800」に装着し、F1.4開放で撮影し、背面液晶で等倍くらいまで拡大してみてビックリ。
-F1.4開放で、しかも、最短撮影距離の0.5m付近で撮影したものにもかかわらず、描写は驚くほど、というか、本当ビックリするほどシャープ。
-背面液晶での判断ではあるが、正直、ここまで凄い描写の標準レンズは見たことがないほど。正直にいって、開放F1.4でこれほど鋭い切れ味を備えたレンズは、これまで体験したことがない。
-至近距離でこれほどの性能を発揮しており、遠景でもその切れ味はまったく変わない印象。おそらく、解像度の点では、F1.4から絞り込む必要がないのでは?と思わせるような感覚だ。
-36メガ機でも、それを遙かに超える解像度を備えている感じなので、今後の高画素化にも十分対応できるだろう。
-ボケ味については、もともと深度が浅いこともあるが、液晶上での判断が難しいこともあり、やや未知数。このあたりは、実際にフィールドでいろいろ撮影してみなければわからない部分といえる。
-プラナー50mmF1.4的な”味のある描写”とはかなり異なる部分もあるが、現代のツァイスが理想とする新世代の描写といえる。ツァイスファンのなかには、この描写に違和感を抱く人もいると思うが、とにかく一見の価値はある。
-日本国内ではコシナから発売されるということで、発売時期は未定だが、年明け以降、CP+前後というイメージという。
-ただ、欧州など海外市場にはすでに出荷が始まっており、価格は約4,000ドル前後。
-日本国内での価格は未定というが、順当に考えれば、40万円台になる可能性が大きい。
-マニュアルフォーカス専用。マウントは最初にニコンFマウント用が登場し、その後、EFマウントが追加されるという。
-もちろん、恐ろしく高価で、とても巨大なレンズではあるが、この描写を一度でも見てしまうと、他のレンズでは体験することができない、唯一無二の世界を備えたレンズといえる。
-レンズ好きにとっては、このレンズを実際に体感するだけでも、会場を訪れる価値があるかもしれない。
-ミラーレス用の「Touit」シリーズ初のマクロレンズ「Touit Makro-Planar T* 2.8/50M」もブースで初公開。
-同レンズは以前からロードマップに記載されていた、待望のマクロレンズだ。
-同シリーズは、基本的に、APSセンサー搭載のミラーレス向けのもので、マウントはソニーEマウントと、富士Xマウント用を発売するという。
-35mm判換算で約75mm前後の等倍マクロレンズであり、サイズはなかなかコンパクト。
-マクロレンズらしく、近距離での映り込みを配慮して、レンズ前面の化粧環に文字がない点にも好感が持てる。
-ブースでは、未発売のフルサイズ機「ソニー・α7」ボディーと一緒に展示されていた。
-同機に装着した感じもなかなか軽快。まだチューニング中ということだが、「α7」ボディーに装着した感じでは、AF測距も比較的スムーズだった。
-液晶上で見た感じではあるが、切れ味はなかなかよさそうだ。
-ちなみに、フルサイズの「α7」に装着すると、自動的にAPSにクロップされるわけだが、メニューでクロップを外してみたところ、やはり鏡胴のケラレでフルサイズまではカバーできなかった。
-もっとも、イメージサークルはまだ余裕がありそうな感じだったので、少々残念な感じもした。
-価格・発売時期とも未定。だが、発売時期については、年明け以降になりそうという。
-また、ブースでは、同社レンズのシネマ用プライムレンズのマウントをユーザーが交換できるサービスについて紹介されていた。
-このサービスは、手持ちのコンパクトプライムレンズとコンパクトズームレンズを対象に、必要に応じてマウントを変更できるもの。
-マウントは、EFマウント、マイクロフォーサーズ用、Fマウント、Eマウント、PLマウントが用意されており、いずれかのマウントの対象レンズを、このなかの他のマウントに変更できる。
-交換時はメーカーに交換したいレンズとマウントを指定することで、マウントと治具とフランジバック調整用のスペーサーを購入することができるもの。価格は7万円。
-マウント部は2つに分かれており、各レンズ別のユニットとマウント部が別構成になっている感じだ。
-もちろん、シネマ用プライムレンズは、マニュアルフォーカス専用なので、このようなことがユーザーでもできるわけだが、なにしろ、レンズがきわめて高価なので、このようなサービスが必要になるという。
●興和
4Kカメラ向けのマニュアルフォーカス専用マイクロフォーサーズマウントレンズ群を参考出品
「8.5mmF2.8 MFT」「12mmF1.8 MFT」「16mmF1.8 MFT」「25mmF1.8 MFT」「35mmF2.0
MFT」「50mmF2.0 MFT」出品
-興和(コーワ)ブースでは、同社初のマイクロフォーサーズ用交換レンズ6種を参考出品(技術紹介)。
-これまでも同社はスポッティングスコープやPROMINAR望遠レンズなどを展開しているわけだが、今回は4K2Kムービーカメラ向けとして、マニュアルフォーカス・手動絞り専用のレンズを出展。
- ラインナップは、「8.5mmF2.8 MFT」「12mmF1.8 MFT」「16mmF1.8 MFT」「25mmF1.8
MFT」「35mmF2.0 MFT」「50mmF2.0 MFT」の計6種を用意。
-このなかでも、超広角系の「8.5mmF2.8 MFT」(TナンバーT3.0)と、「12mmF1.8 MFT」(T1.9)の2種を積極展開したい意向だ。
-やや唐突な感じにみえると思うが、同社は従来からいわゆる工業用カメラのレンズを多数手がけており、そのなかに4/3型センサー対応レンズ群があることから、その光学系をベースに、今回のシステムを参考出品したという。
-工業用カメラ向けのため、8メガセンサー対応で、ピクセルサイズで5ミクロンピッチがターゲット。そのため、4K2Kカメラでの動画撮影では十分な性能を発揮できるというわけだ。
-高性能化のため、非球面レンズや低分散ガラスを採用しており、工業用の高性能レンズという感じだ。
-ブースでは、実際に撮影された静止画プリントも展示されており、それを見る限り、通常使用であれば、静止画でも十分に対応できる性能を備えているような印象を得た。
-現在、絞りリングは、クリック付きのものになっており、動画重視の場合は、クリックをなくす必要もありそう。
-また、動画用で考えると、フォーカス送り用のシステムとの互換性なども拝領する必要がありそう。
-レンズの作りは悪くないが、正直なところ、高級感があるというほどではなく、工業用レンズベースのためか、やや垢抜けない印象もある。
-価格帯は8.5mmF2.8 MFTが15万円前後、それ以外のレンズも10万円前後を予定。
-もちろん、業務用の4Kムービー用レンズとしては格安だが、静止画用としては結構高価なもの。
-実際のところ、今回のイベントでの反応を見て、商品化を決めたいという。商品化された場合には、来春のCP+あたりで出品されるという。
●ケンコー・トキナー
トキナーのシネマレンズ「CINEMA ATX」シリーズを展開。「11-16mmT3.0」「50-135mmT3.0
PL」を参考出品
-同社は今回、トキナーブランドで「CINEMA AT-Xシリーズ」を積極展開。
-既発売のシネマ用レンズ「16〜28mmF3.0」に続き、今回は「11-16mmT3.0」のEFマウント用とマイクロフォーサーズ用を参考出品。
-さらに、大口径望遠ズームの「50-135mmT3.0」のPLマウント用レンズも参考出品。
-価格はいずれも、かなり高価なものになるというが、本格的なシネマ用ズームレンズとして考えると、十分にリーズナブルなレベルといえる。
-また、サムヤンのシネマ用レンズもラインナップを拡充。あらたに、「16mm T2.2
Aspherical ED」を出品していた。
●EIZO
カラーマネージメントモニター ColorEdgeシリーズの最上級シリーズ
27.0型で2560×1440ピクセル表示のセンサー内蔵機「CG277」を出品。新カラーマネージメントソフトのデモも展開
-ハイエンドグラフィック向けカラーマネージメントモニター「ColorEdge」シリーズの27型モデルをリニュアル。
-今回のイベントでは、キャリブレーションセンサー内蔵のCG276の後継機「CG277」を初公開。
-同機は表示解像度が2,560×1,440ピクセルのAdobeRGB対応。
-今回の新ラインナップでは、液晶パネルを一新。Adobe RGBカバー率99%のIPSパネルを採用。
-表面処理の改善により、反射を抑えることで、より引き締まった黒色表示を実現。
-調光時のリフレッシュレートを高速化することで、表示のちらつきを抑え、目の疲れを軽減。
-バックライトに広色域LEDを採用。従来機種比で約40%の省電力化を実現しているという。
-さらに今回、映像制作用途向けに、複数のモニターの一括管理が可能な専用ソフトウェア「ColorNavigator
NX」を新開発。このアプリを利用することで、複数のモニターで画面の色調などを高精度に揃えることができるという。
-そのため、マスターモニターを一度測定し、その測定値をもとに、同ソフトで表示を揃えることで、マスモニに近い画面表示をColorEdgeシリーズで実現できるという。
-同ソフトに対応しているのは、現行機と今回発表のColorEdgeシリーズのみ。1月10日より同社Webで無償提供予定という。
-なお、ColorEdge CG277は、オープンプライス。実売価格はCG277が199,800円前後。11月22日発売予定。
-ColorEdgeシリーズはもちろん、業務用の30インチ4Kモニター「FDH3601」も展示。こちらは現行商品で、価格はj実売で約200万円と超弩級。もちろん、表示品質はきわめて良質だ。
-また、製品ではないが、面白いiOS用アプリを使ってのデモも行われていた。これは、先のCG277で4K画像を手軽にチェックできるように考えられたもので、モニターとiPadをUSB接続して、CG277をiPadでコントロールするもの。
-iPad上の操作で、モニターのカラーモードも簡単に切り替えられるうえ、4Kの全画面表示と、ピント確認用のドットバイドット表示も簡単に切り替えることができるもの。現在提供予定はないようだが、実に便利なアプリなので、ぜひColor
Edgeユーザー向けに公開して欲しいところだ。
●銀一
手軽に正確なグレーバランスが取れる
グレーカードが「シルクグレーカードVer.2」へ進化。GoPro用ステディーカムなども参考出品
-もはや定番商品といえる、銀一の18%グレーカード「シルクグレーカード」が、あらたにVer.2へと進化。
-旧製品と同じく安定した18%グレーを再現しているカードだが、今回のVer.2では、使用インクを見直すことで、より高精度で安定した製造が可能に。
-もちろん、表面は高精度な18%グレー。さらに裏面は、従来、反射率90%のホワイトだったが、今回のVer.2では、反射率50%のライトグレーに変更。両面とも、シルクスクリーン印刷で、今回も日本製。
-説明によると、ホワイトバランスを取る際に、グレー面よりも50%ライトグレーのほうが、より高精度なホワイトバランスが取れるという。
-もちろん、これはホワイトバランスのみであり、露出を含めたグレーバランスを取る場合には、従来通り、18%面を利用する必要がある。
-サイズは従来同様、A4判のみ。価格は従来より高くなり、2枚入りで2,000円を予定。
-現在、12月1日を目処に、Ver.2に順次切り替えてゆくという。
-このほか、GoPro用の小型で手頃な価格帯のステディーカムも参考展示。価格は1万円前後くらいで、カラーバリエーションも用意されるという。
-また、やや大型だが、一脚としても使えるステディーカムも出品されていた。
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